内科、整形外科、リハビリテーション科、各科の医師、看護師、放射線技師、作業療法士、医療事務など、さとやま整形外科内科の医療スタッフがコラムを綴ります。患者様のお役に立てられるようなテーマで記事を執筆しています。
さとやま整形外科内科院長が贈る本コラムでは健康に関する雑話や豆知識などをいろいろご紹介していきます。
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運動と健康シリーズ⑤「運動と炎症」
皆さんは炎症というと、できものや肺炎などの急性感染症を想い浮かべることでしょう。
今日では、炎症の考え方が変わり、肥満や動脈硬化なども『極めてゆっくり進む、極めて軽い炎症』と考えられるようになったのです。
というのも肥満した脂肪や動脈硬化を起こした血管には、細菌やウイルス感染と本質的に同じ炎症細胞が集まっているからです。
実はこの炎症細胞が各種のサイトカイン(一種のホルモン)を分泌し、組織を傷害・破壊するのです。
その良い例が関節リウマチで、或る種のサイトカインの中和抗体を使うと、この難治の病気が劇的に治癒に向かうのです。
さて運動にはこれらのサイトカインが惹き起こす炎症を沈静化する力があります。
多数の炎症細胞が集結し、"サイトカインストーム"を起こす肥満内臓脂肪を運動は減量するのみならず、運動筋からアンチサイトカインを発射して積極的に炎症を抑えることが最近の研究で明らかになりました。
その他にも副腎皮質ホルモンの分泌や迷走神経の緊張を高めて、抗炎症的に働きます。
このように運動には炎症を鎮める効果があり、血管の慢性炎症である動脈硬化を基盤とする脳梗塞や心筋梗塞の発症予防に定期的な運動が有効に働くのです。
今日、炎症はいろいろな病気に関わっていることが分かっており、運動の健康増進効果のかなりの部分がこの抗炎症作用にあるとされています。
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さとやま整形外科内科 院長 稙田太郎
インスリン抵抗性に関し、日本でいち早く人工膵臓を駆使して臨床研究を展開。 医学博士号取得、元日本糖尿病学会専門医、指導医、功労評議員。
2022/12/01 Wrote